2025年12月10日に発表された 株式会社Liberaware(リベラウェア:218A) の第1四半期決算。 翌日の市場はこの発表に激しく反応し、株価は約13%もの急落となりました。
「下水道関連」「インフラDX」という熱いテーマ性を持ちながら、なぜ市場は失望したのか?そして、同時に発表された九州電力との資本提携は救世主にならないのか?
今回は、最新の決算資料(2026年7月期 1Q)を読み解き、リベラウェアの「技術的な光」と「財務的な影」をQ&A形式も交えて徹底分析します。
1. 決算の衝撃:計画を遥かに超える「スピード赤字」
まず、株価急落の主因となった決算数字を確認します。 会社側はもともと今期を「先行投資の期」と位置づけて赤字を予想していましたが、その赤字の増え方が想定の範囲を大きく超えていました。
- 売上高: 2.94億円
- 営業赤字: 6.14億円
- 最終赤字: 6.06億円
会社側は通期(1年間)で「1.78億円の最終赤字」を予想しています 。 しかし、最初の3ヶ月ですでに通期予想の3倍以上となる約6億円の赤字を出してしまいました。
「1年で1.8億円くらいの赤字で済む予定」が、「最初の3ヶ月で6億円減った」となれば、残り9ヶ月で急激に黒字を稼ぎ出さない限り、通期計画の達成(赤字幅の抑制)は絶望的です。市場はこの**「赤字幅の未達(下方修正リスク)」**を強く懸念しました。
さらに深刻なのが財務の悪化です。
- 自己資本比率: 前期末 53.6% → 21.6% へ急落
- 純資産: 9.3億円 → 3.35億円 へ激減
2. 明るい材料:技術は「本物」である証拠
財務は厳しい状況ですが、事業の中身(技術力)に関しては、キラリと光る材料が多くあります。
① 世界が認める「狭小空間」ドローン
リベラウェアの強みは、直径20cm〜30cmの狭くて暗い配管や天井裏に入れるドローン「IBIS(アイビス)」です。 今回の決算資料では、2024年11月に設立した韓国子会社を通じて、韓国の大手エンジニアリング企業「SAMSUNG E&A」への導入実績を獲得したことが報告されました 。世界的企業がこの技術を必要としたことは大きな成果です。
② 九州電力との資本業務提携
決算と同時に、九州電力株式会社を引受先とする第三者割当増資が発表されました 。
- 発行価格:1,396円
- 調達額: 約4,997万円
大手インフラ企業が、足元の株価よりも高い「1,396円」で株を買うと評価してくれたことは、技術への信頼性の証と言えます。
【Q&Aで即判断】なぜ株価は下がった?今は買い?
ここまでの情報を踏まえ、投資家が最も気になるポイントをQ&A形式でまとめました。
Q1. 結局、今回の決算の何が「ヤバかった」の?
A. 「想定していた1年分の赤字」を、たった3ヶ月で使い切ってしまったことです。
会社は「今年は1.78億円の赤字で着地させる」と計画していましたが、1Qだけで6.06億円の赤字を出しました。 残り9ヶ月で約4.3億円の黒字を稼がないと計画通りになりませんが、直近の売上規模(約3億円)からすると、このV字回復は極めてハードルが高い状況です。
Q2. 株価が13%も暴落した理由は?
A. 「今の株価は期待先行で割高すぎる」とバレてしまったからです。
赤字によって会社の解散価値(1株あたり純資産)は約17.7円まで低下しました。 「中身が約18円の株が1,400円で売られている」という状態に加え、「このままでは資金が尽きる」という恐怖が売りを呼びました。
Q3. 九州電力との提携は「良いニュース」じゃないの?
A. ニュース自体は良いですが、金額が「焼け石に水」でした。
九州電力が**「1株 1,396円」という高い価格で株を買ってくれることは、技術への信頼の証です。 しかし、調達できる金額は約5,000万円**だけです。6億円の赤字を出している会社にとって、5,000万円は1ヶ月分の延命にもならない額であり、根本的な資金不足は解消されませんでした。
Q4. 会社のお金(現金)はあとどれくらい持つの?
A. 今のペースだと、数ヶ月で尽きる危険水域です。
- 手持ちの現金: 約5.28億円
- 出ていくお金: 直近3ヶ月で約6億円の赤字
単純計算では半年も持ちません。そのため、市場は「近いうちに、もっと大規模なお金集め(増資)をするはずだ」と警戒しています。
Q5. ズバリ、今は「買い」ですか?
A. 基本的には「様子見」を推奨します。
技術は魅力的ですが、財務リスクが高すぎます。現在の株価下落は「安くなった」のではなく、「リスク相応の価格に修正された」だけです。
- 狙い目: 会社が「大規模な資金調達」を発表し、悪材料が出尽くしたタイミング。
- 判断: 九州電力との提携価格(1,396円)を割っている現状は、市場が「まだ下がある(増資リスクがある)」と見ているサインです。焦って買う必要はありません。
まとめ
2025年12月現在のリベラウェアへの投資判断は以下の通りです。
「技術は本物だが、財務は危機的」。ハイリスク・ハイリターンを許容できる人のみ監視継続。
- ポジティブシナリオ: 海外展開やSaaS売上が急拡大し、次の決算で赤字が大幅に縮小すれば、株価はV字回復するポテンシャルがあります。
- ネガティブシナリオ: 資金繰りのための「大規模増資」が発表されれば、株価はもう一段下げる可能性があります。
今は「落ちてくるナイフ」の状態です。しっかりと着地(資金調達完了や赤字縮小)を確認してから動いても遅くはないでしょう。
※免責事項 本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資の最終決定はご自身の判断で行ってください。

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